2008年 07月 01日
想定外のアクシデント・・・何かの始まり(下)
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○十年後、テレビの画面にがざね女史が映し出される。
レポーター:どうして助けを呼ばなかったんです。
女史:固定電話も携帯も通信できなくて、
門も開かなくなって、外に出られなかったのです。
レポーター:そんなになっていると気が付かなかったのですか。
女史:このところ暑かったものですから、同居人と以前住んだことのある下田に
3泊四日の旅行に出かけたのです。
帰り、土砂崩れのあった天城越えに時間がかかって家に着いたのは
ずいぶん暗くなってからでした。
長時間のドライブで疲れていましたので、荷物だけ家に入れると
その晩はそのまま寝てしまいました。
レポーター:気が付いたのはいつですか。
女史:次の日はお昼ごろに起きて・・・夕方、様子が変だとは思ったのですが
その日も夜になってしまって・・・
その次の日、もうどうにもならなくなっていたんです。
レポーター:同居人の方はいつ行方不明に。
女史:十日ぐらいたって、だんだん食べるものも少なくなって・・・
庭に夏みかんが一個実っているのを見つけたんです。
私が食べたいと言ったものですから、同居人が庭に取りの出かけました。
それから・・・それから帰ってこなくて・・・
私が食べたいと言ったばかりに・・・
(女史の声が涙でくぐもり、それが嗚咽に変わる。)
布団のセールスに訪れた男が異常に生い茂る木々に不審を感じて中を覗き込んだため
助けを求めるがざね女史を見つけることが出来たのである。
すぐに駆けつけた警察が目にしたものは
通常の日本では考えられないほど密生、成長した樹木に覆われた庭と家であった。
そして多くの植物を取り払ってみると、みかんの木の根元にみかんを手にした同居人の
姿を発見したのである。その姿はびっしりと植物に覆われていた。
恐るべきことに、
この通称がざね事件を皮切りにその年から同じようなことがたびたび起こり、
それは日本だけに止まらず世界中で犠牲者の数を増やし続けていったのである。
温暖化の影響か
暑い日が続くと突如植物の成長を狂わせ怪物とさせてしまう・・・
世界中の科学者が解明に努めているが、まだ多くは検証されていない。
皮肉なことにそれ以後、温暖化防止の旗手であった緑化が
人々に嫌われ恐れられ、庭仕事にいそしむ人間がいなくなったのであった。
追記:このフィクションに少しでも現実味を感じることが出来る点があるとしたら
生き残ったのが、がざね女史だったということでは・・・。
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by konnitiwan
| 2008-07-01 09:06
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